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鉄の井①

鉄の井①

熱のある身で、童子はポロポロ涙をこぼしながら走りに走った。

どうしたのだろう。鉄ノ井を左に曲がり、そこではこわい女の人が、

童子達の右の腕をひっぱり、堤端の方につれてゆくといううわさが

あるので、眼をしっかり閉じて、神社の前の道をまっすぐにニノ鳥居

まで走った。道の両側の風に光る葉桜もみないで、海辺のほうへ

右に曲がって、人けのない小さな公園にたどりついた。

*

(福井桂子さんより、「スーハ!」2号にご寄稿いただいた

 「アネモネ 薄みどりの朝の光をあびて りすさん! りすさん!」

 より部分)

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