熱のある身で、童子はポロポロ涙をこぼしながら走りに走った。
どうしたのだろう。鉄ノ井を左に曲がり、そこではこわい女の人が、
童子達の右の腕をひっぱり、堤端の方につれてゆくといううわさが
あるので、眼をしっかり閉じて、神社の前の道をまっすぐにニノ鳥居
まで走った。道の両側の風に光る葉桜もみないで、海辺のほうへ
右に曲がって、人けのない小さな公園にたどりついた。
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(福井桂子さんより、「スーハ!」2号にご寄稿いただいた
「アネモネ 薄みどりの朝の光をあびて りすさん! りすさん!」
より部分)