モディリアーニは私にとって特別の画家です。
上京してすぐに、自分がほんとうに望む方向へ進路を変えたいと悩みましたが、それを選択することは許されませんでした。
若かったので「絶望」という言葉さえ胸にひそめて、たしか都内のデパートで開催されていた「佐伯祐三とブラマンク展」を観に行ったのでした。
その時、数枚展示してあったモディリアーニの絵がこちらを見つめていたのです。
やさしい青灰色の目。
実はその時まで、モディリアーニなんて大嫌いだったのです。
それが、目が合った途端に、モディリアーニは私が張りつめた気持ちでいることも、もろくくずれてしまいそうであることも、すべてを分かってくれていると感じ、ほっとして思わず泣いてしまったのでした。
あんなにかたくなに嫌っていたのに、モディリアーニのほうが先にゆるしてくれたのでした。
一瞬ですべてが分かり恋に落ちたというわけです。
以来、モディリアーニに恋しています。
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自宅の冷蔵庫の扉には、昨年行った「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」と行けなかった「藤田嗣治展」のちらしが貼ってあります。
私はあまり混んでいるところに出かけないので観たものは少ないのですが、先日、国立新美術館で観たモディリアーニは特に美しく心地よく感じられました。
天井が高いので、照明がうまく計算されているのかもしれないなと思いました。
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これももう終わってしまいましたが、「澁澤龍彦回顧展」
「回顧」とは、思い入れ深くまた寛い気持ちで、今生きている時点から眼差しを向けることなのだろうとあらためて思います。
今生きている人にも死んじゃった人にも、澁澤龍彦に関わった人すべてに対しての愛情と敬意を感じ、展示されたものそれぞれからも、同様のあたたかみを感じたのでした。
観た後は清々しい気持ちで風に吹かれました。
***それで、なぜか小声で言いますが、私は矢川澄子さんが大好きです!***