「おうちの中、何があるか、見せて。」
「じゃ、お入り。」
「そこにある、自分の服を持っといで。」
「もういらないもの。」 ハイジは答えました。
「何でいらないんだ?」
「やぎみたいにしてるのが、いちばんいいもの。」
ちょうどおじいさんのベッドのわきに、小さなはしごが立てかけてありました。
のぼってみると、そこはほし草用の屋根裏べやで、まあたらしいかおりのよい
ほし草がうず高くつんでありました。まるい天窓からは、はるかに谷間が
見おろせるのでした。
「あたし、ここで寝るわ!」 ハイジは下へむかって、さけびました。
「ここ、いいわね、おじいちゃん、きて、見てよ、いいとこよ。」
「わかっとるよ。」 下から声がしました。
なべはやがてことこと煮え立ってきました。
おじいさんは、長い鉄のくしに、大きなチーズのかたまりをつきさして、
なべの下の火にかざし、あちこちむきをかえては、ぜんたいが
こんがり黄金色になるようにあぶりました。
ハイジは息をのんで、じっと見守っていました。
ハイジは、パンにやわらかいチーズをぬって、せっせと食べました。
よくやけたチーズは、バタみたいにやわらかくて、パンととけあって
すてきな味わいでした。あいまあいまにやぎの乳をのみながら、
ハイジは心から楽しそうでした。
おりから月のひかりが、ふたたび丸窓からながれこみ、まっすぐに
ハイジのベッドにそそぎました。ハイジは、おもいかけぶとんの下で、
まっかなほおをして、すやすやとやすらかに眠っていました。
(『ハイジ』 J・シュピーリ作/矢川澄子訳(福音館書店)より、書き抜き)
今年もよろしくお願いいたします。
暮れから電池切れ状態で、年賀状も作ったのに、遅くなりすぎて
出しそびれてしまったり、新年早々反省しています。
★
『深夜食堂』の1話目を見てから、久しぶりに鉄のフライパンを
出して、料理をしています。
テフロンとちがって、火で料理する楽しさがあります。
赤いウインナーと、甘い卵焼き、山ほど作って食べました。
ドラマを見ながら、これは飯島奈美さんの料理だなあと
思っていたら、やはりそうでした。
『魔女の宅急便』のキキの言葉を借りれば、
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
今日、電話で「私もがんばるから、お前もがんばれ」と言ってくれた
母にもそう言いました。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
チルチル おじいさんたちいつでも眠ってるの?
おじいさんチル そうだよ。随分よく眠るよ。そして生きている
人たちが思い出してくれて、目がさめるのを待ってるんだよ。
生涯を終えて眠るということはよいことだよ。だが、ときどき
目がさめるのもなかなか楽しみなものだがね。
◆
光 青い鳥は今度こそ手にはいるだろうと思いますよ。
そのことは、この旅の始めから思いつかなければいけなかった
のですが、でも、けさやっと、明け方の光の中で力を取り戻した
時、その考えが、大空からさす光のようにわたしの心にさし込
んだのです。わたしたちは今、魔法の花園の入口にいます。
そこには、人間のすべての「喜び」と「幸福」が集められていて、
「運命」がその番人をしているのですよ。
チルチル たくさんいるの?それとれるかしら?みんな小さいの?
光 小さいのや大きいのや、ふとったのやほっそりしたのや、
そうかと思うと、きれいなのや気味のわるいのや、いろいろですよ。
一番みっともないのだけは、ずっと前にこの花園から追い出されて、
「不幸」たちのところへ逃げ込んでいるのよ。でも、「不幸」たちは
「幸福」の花園のすぐ隣に住んでいてね、その境はもやか
ごくうすい幕のようなもので区切られてるだけで、それが「正義」の
高みや、「永遠」の谷底から吹いてくる風に、始終吹きまくられて
いるんだということを忘れてはいけません。だから、わたしたちは、
ちゃんと準備して、十分用心してかからねばなりませんよ。
「幸福」たちはたいていごく善良なんだけれど、でも、中には
一番大きな「不幸」よりも、もっと危険で不誠実なのもいますからね。
◆
チルチル みんなかわいらしいなあ。あの子たちどこから来たんだろう?
だれなんだろう?
光 あれは「子供たちの幸福」ですよ。
チルチル なんてきれいなほっぺたをしてるんだろう。きれいな着物を
着てるんだろう。ここでは、みんなお金持なの?
光 いいえ、ここだってほかと同じなのですよ。お金持より貧乏人の
方が多いのですよ。
チルチル 貧乏な人たちはどこにいるの?
光 それは区別がつかないわ。「子供の幸福」というものは、この世
でも天国でも、いつも一番美しいものに装われるんですからね。
◆
チルチル ぼくのうちにも、「幸福」がいるの?
幸福 みんな聞いたろう。この人のうちにも「幸福」がいるか
だってさ。小さなおばかさん。あなたのおうちは、戸や窓が
破れるほど「幸福」でいっぱいじゃありませんか。
ぼくたちは笑ったり、歌ったりしてるんですよ。壁がふくらみ、
屋根が持ち上がるほどたくさんの喜びをこしらえてるんですよ。
◆
水 びんをごらんになったらわたしを思い出してくださいね。
水差しの中にも、じょろの中にも、水おけの中にも、
水道の口にも、どこにでもわたしはいるんですよ。
◆
チルチル ひとりぼっちでどこへ行ってしまうの?
光 遠くではありませんよ。子供たち。そこの「物の沈黙の国」へ
行くのですよ。
◆
チルチル このぐらい青ければいいの?
娘 ええ、これでいいのよ。
チルチル ぼくもっと青いのも見たんだよ。でも
ほんとに青いのはね、それこそどんなにしても
つかまらないんだよ。
◆ 『青い鳥』メーテルリンク/堀口大學・訳(新潮文庫)より
今年、最初に読みなおした本でした。
実は、すみれちゃんを買ったお店に、ある日同じくセルロイドの男の子がいたのでした。
迷って買わなかったのだったか誰かが買ってしまったのだったか。
とても残念なことをしました。買っておけばよかった。
よし、すみれちゃんの友だち探しをはじめます!
てくてく…。女の子でもいいかも。
すみれちゃんは1910年フランス生まれ、身長10,4cm。肌はつやつやセルロイド。青い目。
先日買った水菜に、蕾がついていて、あらと思ってコップに活けておいたのでした。
水菜はちいさな黄色い4枚の花びらをひらきました。(写真はうまく撮れなかった)
ひらひらのやわらかい葉っぱがかわいくて花が終わってからも、そのままコップに。
実は今節約しようと思っていて、なるべく買い物せずに帰っているのですが、冷蔵庫を見たら野菜が無い。
それで私は、毎日水を替えて話しかけていたその水菜を、とうとう鍋に入れてしまったのでした。
なんだか複雑な気分。
この子はすみれちゃん。
フランス生まれ、身長10.4cm。
わたしよりずっと年上。
演技に目覚めた。かもしれない…。
職場でとっていた新聞をやめてしまったので、世の中で何が起こっているのかわからない。
もともとテレビはあまり見ないのだけど、新聞を見なくなってから、さらにつけなくなってしまった。
社長に「あんな事件にあわないように気をつけて帰りなさい」と言われても、ちんぷんかんぷんである。
「なんだ知らないのか」と訊かれて「はい、新聞をやめてしまったので」などと言いたくなるが、それは筋が違うだろうし、その前に「人件費けずるから辞めてくれ」と言われそうで黙っている。
家にいる時間が短くてあれこれ片付かないので、なるべくテレビはつけない。
食事の時だけDVDを観る。
今は『ユリイカ』を見ながら食事をし、食後はそのまま見ているが、いつも見ながら寝てしまう。
たぶん夢の世界はセピアカラーである。(それにしても、あれはセピアにしなければいけなかったのだろうか…と毎回思っている)
もうずっとそれが続いている。
『ユリイカ』のせいではなくて、ここのところとても忙しくて疲れ果てているからである。
それで、いつも途中から見直すのだけど(鉄のバス)、目が覚めると4人いたはずがいつのまにか2人になっている。
あるいはすでに終わっている。
この映画はいったいどのくらいの長さなのだろう…5時間くらい?と日々見続けているのに、見終えることができない。
あおいちゃんは子どものままで、延々バスに乗り続けるのである。
そしてわたしは今夜も椅子で寝てしまい、数時間で目覚めるとまた作業をはじめて起きていて、睡眠不足の悪循環からも抜け出ることができない。