9月26日は、詩人の福井桂子さんのご命日です。
はやくも一周忌なのですね。
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二階の廊下も床も木材で
木枠のある古風な
夏の窓を
すこし首をかしげてのぞきこむと
子どものころの
わたしの家の夏の庭がみえた
光りといっぱいの草の花と
つき山とほのぐらい楓の木の茂みと
死んだ弟がよく本を読んでいた小廊下と…
ふしぎさにもっとみたくて
再び頭を巡らすと
透きとおった夏の窓は
あっさりと消えてしまい
わたしは厚い雨雲に包まれてしまった
どうして忘れられよう
エゾ松林の生き物とばかり話している童子を
沼の方の音道から聞こえてくる
りんりんという物おとを
あれは霜の森のざわめき
またはぶっぽうそうのうそつきの啼き声
(福井桂子『風攫いと月』書肆山田刊「沼の方の音道から聞こえてくる」より)