もう何年も前から、漆器が欲しいと思っていました。
作家ものの艶消しなど、何度か欲しいと思いながら、
なぜか決め手がなくて、買えずにきたのでした。
骨董品屋さんで、小さな蓋付きの椀を買ってみて、
ますます漆器に気持ちが傾いていました。
せっかくだから、ほんとうに欲しいものに出会うまで
妥協しないことにしよう。
そして、昨年の暮れに、運命の出会いをしました。
仕事帰りに用事があって立ち寄ったデパートで。
その時は選ぶ時間が足りずに、年明けに別の会場に行き再会。
そこにはなかったものを送ってもらうことにし、
地震による配送の影響などもあり、
今週のはじめに届きました。
秋田県の川連(かわつら)漆器です。
地震の後、気持ちまで節電していたような感じでしたが、
届いた荷物をひらいたら、
ほら、これは泣いてしまうでしょう。
これは、稲庭うどん用のどんぶりです。
そして、こちらがお椀。
桜の花びらをいれてもらったのです。
しばらくはりつめていた気持ちが、ほっと和みました。
川連漆器は、秋田県の川連町(現、湯沢市)の伝統工芸品です。
もともと生活に困窮する農民の、冬の内職として
武具に漆を塗ることから始まったそうです。
並んでいる漆器を見た時に、懐かしいものがこみあげました。
故郷、秋田の実家にあるものは、お盆のお膳のセット、仏具、仏壇まで、
すべてこの川連塗りのものでした。
地震の数か月前に頼んであったとはいえ、
この時期に届くのは、明るい兆しを見るようでしょう。
辛いことが続きますが、生きて、ご飯を食べて、
ふつうのことをふつうにできるようにしたいと思う気持ちが、
東北を、そして日本を、立て直す力になればと思います。
木をくりぬいたものに塗り重ねた川連漆器は、
とてもじょうぶで保温性もよいそうです。
なによりも、木の重量とその優しいなめらかさで、
手のひらにしっとりとおさまり、使い心地のよい器です。
よし、元気を出そう。
桜を見に行こう。
今年の桜をおぼえておこう。
今年は、桜をちゃんと見ておこうと思います。