新宿のお店に、忘れ物をしてしまい、それを取りに行ったついでに映画を観る。
『マイ・バック・ページ』。
1969年から1971年という、それを聞いただけで、イメージが立ち上がってくる時代の話。
その時代を生きた人にとっては、一年違うだけで、状況は大きく変わったのだろうと思う。
当時まだ子どもだったわたしには、様々な出来事を大きく括って
あの世代という理解しか無かった。
だから、当時に対する熱い思いも、強い興味も無いまま映画を観始めたが、
事実をもとにしたストーリーでありながら、その時代に埋没せずに、
人物が描かれていることに好感が持てた。
当時のカリスマと、妙に人の気をひきながらも本物のカリスマになれない
胡散臭い人物(松山ケンイチ)との違いが、それぞれうまく演じられ、また撮られていて、
冷静な傍観者でありながらも、多くの人が動かされた時代の心理に納得がいった。
それにしても、映画を観る場面が映し出されると泣けるのは、何故だろう。
『ニューシネマパラダイス』も『奇跡の海』も、
ちらちらと光の動くスクリーンに照らされた顔を観ると、こみ上げてくる。
この映画でも、主人公(妻夫木聡)が映画を観る場面が好きだったし、
映画を観るという共通の感情が、人物との距離を縮めてくれた。
シンパシーとは、そういうことなのかもしれない。
人一倍映画を観てきたわけでも、映画に憑かれているわけでもないけれど、
映画雑誌も読みながら、真剣に映画を観ていた短い時期が、人生に数度あった。
経済的なことや時間がとれないことで、
映画館から間遠くなっている期間のほうが長いのだけど、
たぶん一人で映画館の椅子に座るのが好きで、映画を観ずにはいられないというような、
それぞれの事情を超えた人生のやるせなさのようなものに共感するのかもしれない。
と同時に、なかなか映画を観ることができない状況にも、思いがゆくのだろう。
映画館で映画を観ることは、わたしにとっては今でも、ささやかな贅沢。
本当は、もっと映画を観る時間がとれるはずなのに、
大事なことを後回しにしているような気がする。
自分の時間と人生を大事にしよう。
もっと映画を観に行こう。