2月に撮った、黒田喜夫の詩集『不歸郷』。
珍しく、黒ではなく、青い装幀。
装画は、若林奮。
装幀は、田辺輝男。
*クリックすると、画面が大きくなります。
つらいタイトルで、アップできずにいたのでした。
背表紙の、黒田喜夫という名前の下の赤い丸は、シールのようなのですが、
もともとはないものでしょうか。
前の持ち主が貼ったものでしょうか。
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用があって、故郷へ帰ってきました。
ここ数年、東北は、太平洋側を通って、青森には行く機会がありましたが、
実は故郷へは帰っていなかったのです。
今回は、実家へは帰らず、その近くの町まで。
ふるさとの駅は、新幹線の路線からは取り残されているため、
東北新幹線で秋田まで行き、在来線で南下しました。
雨にけぶる秋田駅で、乗り換えの電車を待ちます。
乗り換えの電車の時刻まで、1時間くらいあったのですが、
ベンチに座って鉄道気分に浸りました。
内田百閒先生のことを思いながら。
隣に座った年配の女性と発車間近まで、話しました。
「ヒカワ」と何度も言うので、どこの川の話だろうと思って聞いていたら、
だいぶ経ってからようやく「氷川きよし」のことだとわかりました(笑)。
見知らぬ人もみな、あたたかいです。
目的地の駅に着いたら、向こうのホームにかわいい電車が停まっていました。
なぜだかわかりませんが、「宇宙戦艦ヤマト」の絵でした。
ほのぼのとした風景の中では、なんだかほほえましい気持ちになります。
帰りに見たのは、正面に、おばこの絵がついた「おばこ」号でした。
2輌だけというのも、かわいいでしょう。
秋田駅のホームで見たこれは?
「クマゲラ」ですね。
白神山地に生息する天然記念物です。
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観光ではないので、写真はこれだけ。
東京では、混みあった車内で人との距離の近さにいらだち、
なんてすさんだ気持ちで電車に乗っているのだろうと思います。
2輌だけの電車に乗り合わせた人々の顔、懐かしい車窓の景色。
電車は「人」を乗せて走るのだと、あらためて、しみじみと思ったのでした。
故郷では、エレベーターなど狭い場所に乗り合わせても、
見知らぬ人同士で、言葉を交わし、ゆずりあい、いたわりあい、
なめらかにすれちがいます。
故郷では誰もがふつうによい人です。
よい人であることが、ふつうで、みなやさしいのです。
本来の人の姿を見たようで、ほっとしたのでした。
いつのまにかすりきれていた自分に気づいて、
リセットできたような気もします。