「北のカナリアたち」を観ました。
日本映画っていいな、日本の役者さんってすばらしいなと思える映画でした。
海の向こうに山をのぞむ壮大な風景には、圧倒されました。
山を間近に見ながら、海にも近い雪国で育ったわたしには、
いつか帰りたい懐かしい故郷のようにも思えました。
花畑、かわいい校舎、海辺の家並、子どもたちの歌声。
美しい映像、胸の内にこらえているものを感じさせる演技。
素朴で懸命に生きる人たちを見て、一緒に泣いて、
さあ、わたしも元気を出そうと、映画館を出ました。
ああ、こういう映画を観たかったのだと思いました。
幼い頃、母の腕のなかでうとうととしながら音だけ聴いて、
時々あけた目に銀幕の白い光が眩しかった。
ほとんど眠っていたのに、あたたかく幸福な思い出。
それが最初の映画館の記憶です。
母に抱かれて眠っていたので、その頃、赤ん坊だったのだろうと
思っていたのですが、映画のなかで流れていた歌の記憶からすると、
小学校一年生くらいだったようなのです。
そういえば、帽子をかぶらされて、出かけたような……。
かつては、地方の小さな町にも、映画館がありました。
映画は、息抜きの少ない農村の、つましく若い夫婦に、
なんて優しかったんだろうと思います。
辛抱の多い日々のささやかな贅沢、
慰めや励ましとなっていただろうと思います。
もし、映画館が今でもそれぞれの町にあったなら、体調を見て、
体力を気にしながら出かけなければならなくなった両親でも、
楽しむことができただろうにと思います。
もう誰にも気兼ねなく出かけられるようになったというのに、
映画館で映画を見るのは、地方ではたいへんなことなのです。
もう一度、親子で、一緒に映画を観られたら素敵ですね。
歩くのが辛くなった父でも、映画なら座って観られます。
簡単なことのように思えるかもしれませんが、年齢と共に、
実現するのがだんだん難しくなってきています。
でも、今すぐにでもその願いが叶えられるなら、この
「北のカナリアたち」を観に行きたいと思います。
そういう夢も抱かせる、よい映画でした。
多くの人が、この映画を観て、元気になれたらいいなと思います。