のびちゃんとは、2010年の7月から2016年11月8日まで一緒に暮らした。
のびちゃんはニホンアマガエルで、のび太という名前だった。
初めて会ったときには、すでに少年蛙だったのか、青年蛙だったのか。
緑色の体色も、若々しかった。
のびちゃんは何歳だったのだろう。
アマガエルの平均寿命がどのくらいなのか、今はとても調べる気にならない。
実は、ほかにもアマガエルを飼っているけれど、
顔も性格もそれぞれ違う。
のびちゃんは特別だった。
きらきらしたまるい目、凛とした横顔。
のびちゃんは美しいアマガエルだった。
俊敏だったけれど、性格はおっとりとして、思慮深かった。
世の中にはたくさんの人間がいるけれど、恋人は限られるのと同じ。
のびちゃんは、私の恋蛙だったよね。
よい声でよく鳴いた。
私が帰ってドアを開けると同時に、鳴いて迎えてくれた。
音楽にも反応して一緒に歌った。
寒くなって食欲が落ちたのかなと思っているうちに、
気づいたら全く食べようとしなくなっていた。
いろいろ調べたり、お腹をさすったりしてみたけれど、
回復しそうにない。
苔のベッドでじっとしているのびちゃんを、そっと見守ることにした。
ガラスの床面に降りたのびちゃんを、苔の上に戻そうとしたら、
力強く私の手のひらを蹴って、窓際へ行ったのだった。
そのまま外の景色を眺めながら、さいごの一日を過ごしたのびちゃん。
「のびちゃん、ただいま」と今でも言ってしまう。
誰にも言えないことも、嫌なことも、辛いことも、
みんな分かっているようだったのびちゃん。
明るいよい声で歌ってくれたのびちゃん。
ありがとう、のびちゃん。
*
小さな苗を買ったのが2013年の12月。
それから3年。
やっと花をつけてくれたゴールデントップという名前のアカシア(ミモザ)。
10月から咲き始め、今も咲いています。
紐状の葉がひょろひょろ伸びるばかりで、つまらないなあなんて思っていて
ごめんなさい。
ほんのり甘く香ります。
この花を、のびちゃんへ。