『K』
三木卓/講談社文芸文庫
3月に写真を撮っていたのですが、なかなかアップできずにいました。
単行本で読んでいた『K』ですが、あらためて文庫で読み直しました。
まだ寒かった時期に、登場人物に思いを重ねながら、一人職場の片すみで
読んだことが、暖かくなった今では懐かしく思い出されます。
本を読み終え、4月の初めに浄智寺へお墓参りに行きました。
本の上に置いた銀のチャームは、雪ん子のように見えるというので買ったものです。
雪道を歩いていくイメージで、後ろ姿で置きました。
でも、向こうに見えるのは菜の花です。
東北の春は、一気にやってきますから。
帯の背に、「歳月重ねた愛のかたち」。
『K』というタイトルの上に㋯……、ではなくて平仮名の(み)。
写真を撮りながらそれに気づき、いっそう切ない思いになりました。
仰向けに本を読みゐるわが横にわからない人だと言ひて眠れリ 河野 裕子
寒の夜を頬かむりして歌を書くわが妻にしてこれは何者 永田 和宏
(「解説」/永田和宏 から)
♦
連休中に撮った東北の桜を。
父と見た最後の桜。
あのとき、父の動作がとてもゆっくりだったのは、だいぶ具合が悪かった
せいだと思っていました。
けれども今年の桜を見ながら、ふいに、父はゆっくりゆっくり移動しながら
桜を見せてくれたのだと思えたのでした。
ふりかえって。
やっと上流に着きました。
どこよりもきれいだった故郷の桜。
母と一緒に。
♦