矢野静明展 リントの森 lint=糸くず
2019.10.4 Fri.――10.14 Mon.
13:00〜20:00
※10月8日(火) 休廊 最終日 19:00迄
ギャラリー・フェイス トゥ フェイス
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先日は国立新美術館へ。
北島敬三さんの写真の前で圧倒される。
東北育ちの私にはどこかで目にしたことがあるような風景なのに、
北島さんの写真でなければ出会えない世界。
瞬きの後には失われてしまう一瞬に立ち会っているという実感が湧く。
ここに写し出された世界をこの目に焼きつけておきたいのに、
全てを記憶することはできないという崩折れるような思いと、
息を止めた永遠と対峙するような感覚。
震災後に北島敬三さんの写真を見たときの気持ちが蘇った。
ありありと。
人間の記憶の容量をはるかに超えたカメラの眼差しで、
視界の隅々、細部までをも写し出す。
壊れているものも、失われてゆくものも、
静かにその摂理を受け容れている神々しさをも感じる世界。
写真の前で、私は独りで、一切のものから切断されていて、
失いつつあるこの一瞬が名残惜しくて切なくて……
となんだかそんな思いが次々湧いて、こみあげてくるのだった。
「わたしはまもなくしんでゆくのに/せかいがこんなにうつくしくては こまる」
という吉原幸子さんの詩の一節がふいによぎった。
北島敬三さんの写真も展示されている国立新美術館での
「話しているのは誰?――現代美術に潜む文学」は
11月11日(月)まで。
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