幽霊が、そっとわたしの部屋の扉を二度、三度あけようとする
すると灰紫色の霧が部屋中にたちこめる
岩山の上で
白いわ山羊が、細い脚とひづめでくるりくるりとまわっている
神、神のようなお方ならおろしてやれるだろうに
ルリマツリもわたしもみつめているだけで
泣きたくさえなるけれどみつめているだけで
(福井桂子「白いわ山羊をそっとおろす」より部分
/「P」80号、『福井桂子全詩集』所収)
※ ルリマツリ=イソマツ科の常緑低木、青い藤青色の花が咲く。
(前同詩の註より)
今年は、長雨とその後の暑さで、全く手入れをしないまま
秋を迎えてしまった。
ルリマツリは、塀の外に乗り出し、花を咲かせている。
ここ数日の風雨で、藤青色の花が歩道にこぼれている。
通る人の迷惑にならないようにと気になりながらも、
もうしばらく、このまま咲かせておこうと密かに思う。
庭の植物が、詩のなかでも咲いていて、花を眺めながら
詩を読んでいるような錯覚におちいることがある。
同じ花を見ていたであろうその人の眼差しを思いながら。
ルリマツリ、花をたくさん望むなら、花の終わった枝は、
新芽の上から切ってしまうこと。
剪定し、切り詰めると、新しい枝にまた花を咲かせます。
涼し気な花色ですが、実は強い日差しを好み、しなやかな枝を
旺盛に伸ばします。