元日に多摩川へ。
染色用のヨモギを探しに。
ヨモギは見つからないので、探すのを忘れて枯れ草を観察する。
気がついたら、草の実や綿毛がコートの裾だけではなく、
袖口や靴下にまでくっついていて、イガだらけだった。
手で払おうとすると繊維の奥にもぐりこんでしまい、
あきらめてそのまま枯れ草のなかに分け入って写真を撮る。
ススキを透かしてみると、
穂綿が、まるい虹のように見えた。
まぶしいものばかり見ていたら、
あたりがざわざわいいはじめて、急に強い風が吹き始めた。
ススキが音を立てて風にゆさぶられる。
穏やかな晴天で風もなかったのにどうしたんだろう……。
ざざざざと草むらはざわめき、風はうなり、地響きに似た音がして
一瞬地震かと思って身構える。
もしかしたら巻き上げられるかもと不安になる。
見渡すと誰も近くにいない。
あ……。
枯れ草がいっせいに空に舞いあがる。
カメラを持っていることを思い出してあわてて撮ってみたけれど、
一瞬なにがなんだかわからないくらい巻き上げられた枯れ草は、
あっというまに青空にすいこまれてしまいました。
気がついたら、風もやんでいた。
すべてがおさまってから娘が姿を現したので、
すごい風だったねと言うと吹いていないと言う。
ではあれは「竜巻」?
今年最初の日に、生まれて初めての体験。
まるでリュック・ベッソンの映画で、ジャンヌ・ダルクが神の声を聴く場面のようだった。
あんなふうにざわざわした。
もちろん、風の音しか聴いていないけれど。
帰ろうと思って振り返ると、川の水が光っていた。
前には長い影。