『シモーヌ・ヴェイユ―詩をもつこと』が思潮社から刊行されました。
表紙は、少女時代のシモーヌ・ヴェイユの写真。
美しい特集号です。
責任編集は、今村純子さん。
近著に『シモーヌ・ヴェイユの詩学』(慶應大学出版会)
などがあります。
辻井喬さんのインタビューや、吉田文憲さんなど多くの方々の
論考、対談、シンポジウムなどひろい視点から
シモーヌ・ヴェイユを知ることができます。
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最近またシモーヌ・ヴェイユを読み返してみて、
これまで以上に、はっとする箇所に多く出あうようになりました。
ヴェイユの言う「根こぎ」ということが、震災後のわたしたちに重なり、
実感として読めるようになったということかもしれません。
とくに福島の人々のちりぢりになった悲しみを、
ヴェイユの言葉のなかに見出しながら、
いまこの時代を生きる手掛かりもまた
ひろいだしているところです。
予約していた『群像』2012年2月号が届いて、
何気なく手にとった瞬間、不思議なことに自然と148ページがひらき、
「スーハ!」という言葉が目に飛び込んできたのでした。
え……?
偶然とは思えないような出来事に胸がどきどき、
三木卓さんの「K」という小説でした。
詩人福井桂子さんとの日々を書いた小説です。
ご家族だけに安心して見せた姿でもあったのでしょう。
自分自身とも重ねて考えながら、
たぶんそのようにしか生きることができなかったであろう人の
思いがけないつよさと、それをうけとめたひろさ、
書くことと生きることが密接するような日々の出来事に、
不思議な感慨がありました。
福井桂子さんの詩から、さらにふくらみと温もりを
感じられるようになりました。
闘病中にもかかわらずインタビューに応じてくださった日、
福井桂子さんのゆたかな記憶力と整然とした言葉に驚かされたことが
今でも鮮やかに思い出されます。
昨年9月の御命日のころには、私事がかさなり、
毎年行っていたお墓参りに行けませんでしたが、
春の兆しを感じるころに、また浄智寺へ行きたいと思っています。