金婚式
(福井桂子さんの詩集『優しい大工』から「金婚式」部分を)
金婚式まで…
風の夜まで…
生きていたっていいでしょう
白いかみのじいさま ばろーしーくん!
はにかみやのばあさま べろーしーちゃん!
みんなみんないってしまうでしょう月の夜…
ちぎれて電信柱に細くからまり
うなだれて…
(略)
詩人も…
すこしは淋しくはなるけれども
生きていたほうがいいのだ
(略)
☆
☆☆☆
☆
今日は、両親の金婚式。
昼休みに電話をしたのですが出ないので、
父がさそって食事にでも行ったのかなと思っていました。
夜電話があってそのことを尋ねたら、雪かきをしていたとのこと。
朝も、昼も、雪かき。 (笑)
50年前の結婚式も雪の日でした。
鰰(ハタハタ)をもらったのでその下ごしらえをしたり、忙しかったとのこと。
ほかに特別なことはなしの一日だったようです。
お祝いは別のことを計画しているので、
今日はフリースの上着を送っておきました。
それはそれで喜んでくれたようです。
福井桂子さんの第一詩集の最後に
「金婚式」という詩が収められています。
若い日の福井桂子さんには別の思いがあったかもしれませんが、
両親が50年という年月を過ごし、
二人そろって元気にこの日を迎えられたのだと思いながら
この詩を読むと、なんだかしみじみとします。
両親に、平林寺で撮った山茶花(サザンカ)を。
花言葉を調べたら、「困難に打ち克つ」「ひたむきさ」だそう。
白花には「 理想の恋」とも書いてありました。
☆
福井桂子さんの第一詩集『優しい大工』のあとがきには、
「わたしたちのひとしく生を受けているこの時代に、もしも
わたし自身の感受していることを完璧に表現しおおす詩、
詩人をもつことができるなら、怠惰なわたしはけっして
自分で詩を書こうとはしないでしょう。ほんとうに、
わたしはそのような詩また詩集をもったと思えたとき、
二七歳のころ詩を書くのをしぜんにやめました。しかし
日々の営みのなかで、わたしはわたしでしかないという
おそろしく単純なことに、再び気づかなければなりません
でした。そしてまたぼそぼそと、詩を書きだしました。」
と書いてあります。
これを読んで、わたしはどんなに励まされたことでしょう。
山茶花の花言葉を読んでいたら、このあとがきのことも
書きたくなりました。
☆
きのうは、お誕生日祝いに病院へ。
昔、かわいがっていた飼い犬と暮らしていた人なので、
犬のちいさなぬいぐるみを持って。
しばらく一方的に話し、手をさすり、
「じゃあまた来るね」と言うと、その時だけ頷いてくれました。
病院の廊下を歩きながら何気なく見えた病室の人が、
ベッドの上でやはりちいさなぬいぐるみを両手にのせて
じっと眺めているのでした。