9月26日は、福井桂子さんの御命日です。
夏水仙の咲く三時半、
旅立つ人を一度に二人も送ってしまう。 一人
は、運河と湿原の地のはずれに。 一人は、野
と落葉村のはずれに。一人には、長袖の薄茶
のセータを持たせ。 一人には青い櫛を、 とて
も透きとおった巨きな青い櫛を持たせ。
(「夏水仙の咲く三時半」/福井桂子 詩集『艀』所収)
湖沼地のそらは
セロファン色のよるの水で
そして 暗緑の引き込み線のように
きらきらと星が点滅しています
(「よる」/福井桂子 詩集『艀』所収)
紹介したのは、福井桂子さんの詩集『艀』の中で、「沼沢地からの便り」として
まとめられた数篇の詩の部分。
初夏に、実家に母を送るついでに、福島県の五色沼を辿る
歩道を歩いた。
毘沙門沼から桧原湖まで、快晴に恵まれ、るり沼や青沼は
真っ青で美しかった。
五色沼は、五色に変化する一つの沼と勘違いしていたが、
大小の湖沼群の総称で、それぞれの色の違いが美しい。
思いがけず3.6kmの距離を歩くことになったが、次の湖沼
までの距離がさほど遠くなく、同じ道を引き返すならと、結局
先へ先へと歩き通したのだった。
東北の、日本の美しさを、胸が痛くなるほど感じた旅だった。
芽吹き、短いサイクルで山々を覆うほどに茂る雄々しい自然にも
胸をゆさぶられた。
東北のこと、それぞれのふるさとのことを、再び強く思っている。