夏水仙の咲く三時半、
旅立つ人を一度に二人も送ってしまう。一人
は、運河と湿原の地のはずれに。一人は、野
と落葉村のはずれに。一人には、長袖の薄茶
のセータを持たせ。一人には青い櫛を、とて
も透きとおった巨きな青い櫛を持たせ。
(「夏水仙の咲く三時半」/福井桂子『艀』より)
9月26日は、福井桂子さんの御命日です。
「夏水仙の咲く三時半」は、2018年の記事でも紹介した詩です。
夏水仙の写真が無くてごめんなさい。
これは、6月の末に撮った半夏生(ハンゲショウ)です。
YRP野比駅からバスに乗り、光の丘水辺公園へ。
「聖なる池」と名付けられた湿地帯に群生する半夏生は、
特定の期間だけ立ち入りが認められ、鑑賞することができます。
普段は、立ち入りを制限され、手つかずの自然が保全されています。
夏水仙は、同僚から、庭に咲いた花の名前を尋ねられ、
調べた候補のなかにあったもの。
それで、夏の間、「夏水仙の咲く三時半」という
福井桂子さんの詩を、口ずさむように、
何度も思い出すことになったのでした。
毎年のことですが、休日に、ふと窓の外を見ると、地面から唐突に茎を出し、
いつの間にか咲いている彼岸花に驚かされます。
球根をだいぶ整理したつもりだったのですが、今年もやはり同じ場所から
芽を出したのでした。
もうそんな時期なのですね。
夏水仙は、じつはヒガンバナ科だとのことです。
花の名前を調べていると、福井さんの詩集に出てきた植物の名前が
いくつも見つかり、福井桂子さんはどうやってその花の名前と出会った
のだろうかと考えてしまいます。