友だちが映画『アレクサンドリア』を観たと書いていたので、
予告編を見たらむしょうに観たくなって観に行きました。
結末を思い出すと、今でも泣きたくなります。
でも、観てよかった、よい映画でした。
パンフレットの中で、漫画家の岡野玲子さんが、
オシリス神と結び付けている部分を読み、救われました。
信念によって毅然とした態度を貫いた主人公ヒュパティア。
わたしたちが共に在り、自分の信じるものだけにとらわれずに
互いの選択の自由を認めあえるならばと考えるのですが、
信仰の礎を持たないわたしには理解の足りないところがあるかもしれません。
いかなる理由であったとしても、それが暴力や殺戮を正当化し、
破壊し、相手を傷つけてもよい正しさなどないと思います。
複雑に思える事情も、実はたった一人を頂点とする権力の争いであり、
それに多くの人々が巻き込まれ、歯止めがきかなくなってゆく。
次第に混乱し、加速度的に悪い方へと事態が動いていくのを
おしとどめることができない悲しさ。
いまだに同じことを繰り返している現代にも重なりましたが、
同時にわたしたちは別の方向へ進むこともできるのだと、
信じたくもなりました。
否定によって成り立つものの脆弱さと、愛と信念を貫く強さ。
同じ未来を目指すなら、力による北風のやり方よりも、
愛と智慧を持つ太陽の方法を選びとりたいと考えます。
たまたま読んでいた本に、映画と通じるテーマがありました。
『ほんとうの考え・うその考え』(吉本隆明著/春秋社刊)
「ほんとうの考え」「うその考え」とは、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の
登場人物ブルカニロ博士が言った言葉のなかにあるものです。
長くなってしまうので、その言葉の部分だけを書きとめてみます。
☆
「みんながめいめいじぶんの神さまがほんたうの神さまだというだらう、
けれどもお互ほかの神さまを信じる人たちのしたことでも
涙がこぼれるだらう。それからぼくたちの心がいゝとかわるいとか
議論するだらう。そして勝負がつかないだらう。けれどももし
おまえがほんたうに勉強して実験でちゃんとほんたうの考えと
うその考えとを分けてしまへばその実験の方法さへきまれば
もう信仰も化学と同じやうになる。けれども、ね、ちょっとこの本をごらん、
いゝかい、これは地理と歴史がかいてある。・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぼくたちはぼくたちのからだだって考だって天の川だって
汽車だって歴史だってたゞさう感じてゐるのなんだから、
そらごらん、ぼくといっしょにすこしこゝろもちをしづかにしてごらん、
いゝか。」
『銀河鉄道の夜』 (異稿)(初期形 ジョバンニの切符)